イクメンな彼氏
「お風呂入れておいたから入っておいで。
それとも、先にベッドでもいいけど……」

吐息を感じて耳が熱くなり、私は弾かれたように立ち上がって「お先に!」と洗面所に駆け込んだ。

ドアを閉める瞬間「くくっ」と笑って「比奈は本当に可愛いね」と中津さんが呟いたのが聞こえ、頬どころか全身が熱い。

鼓動が 大きくて早くて、洗面所の鏡に写る自分の顔は塗りつぶしたみたいに真っ赤だ。

……今夜ここに泊まるんだ。
邪魔する人は誰もいない。

彼に、抱かれるんだ……。

シャワーを浴びて気持ちを落ち着けようとするけれど、そんなことは不可能だった。

浴室はきれいに清掃されていて、私のマンションの2倍近くの広さがある。

彼があらかじめ入れてくれていた浴室暖房のおかげで寒い思いをすることもなく、設備の違いにも驚かさせる。

浴室の鏡の前に立つと、曇り止めの加工がされているらしい鏡にははっきりと全身が写り、私はため息をついた。

鏡に向かって背中を向ける。
一緒にお風呂なんて絶対に入れない。こんな身体、明るいところで彼に見られたくない。

寝ころんでも足元に余裕のある浴槽は気持ちよくて、そんな気持ちは忘れようと足を伸ばした。

毎日こんなお風呂に入れたらなぁ……。
このマンションなら保育園から近いし、通えるよね。

なんて先走ったことを考えてしまって恥ずかしくなり、出た後のことを想像してしまったりでなかなか湯船から出られず、お風呂から上がるとすっかりのぼせてしまっていた。
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