イクメンな彼氏
葉が落ちて見通しがよくなった枝の隙間から光輝くクリスマスツリーが覗いているのが目に入って、私は思わず立ち止まった。

手を引っ張る形になって彼も立ち止まる。

「話すことなんて何もありません」
やっと私の喉からは言葉が絞り出された、と同時に彼の手を振り払う。

中津さんのことを男性として見てしまっ
ている限り、私が彼と関わることは許されない。
そう、私は決めたんだから。

「……本当に、傷つけてごめん。
でもほんの少しだけ時間をくれないか。
どうしても話したいことがあるんだ」

中津さんの冷たい指が頬に触れて、私は自分が涙を流していたことに気がついた。

慌てて自分の指で涙を拭って彼と距離を置く。このまま彼を拒絶して帰れば、全て忘れられるんだろうか。

この10分間右手に感じていた温もりが、それは無理だと物語っている。

彼が話したいことはわからないけれど、私は今日はっきりとさよならを告げよう。

強く決心して、私は頷いた。
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