イクメンな彼氏
「神崎さん。うちの母です」

母って?
お母さんってことだよね?
すごく若いけど、中津さんのお母さん……?

「悠理花ちゃんの……おばあさん……?」
中津さんのお母さんのあまりの若さに驚くのと同時になぜ自分がここにいるのかわけがわからなくなり、困惑したままとりあえず頭を下げる。

私の呟きに中津さんのお母さんがくすりと笑った。大きな目が細くなる。

「私がおばあさんになれるかはあなた次第でしょ。 悠理花を知ってるのなら、あなたが噂の子ね」

……?
わたし次第?
噂の子……?

何がなんだかさっぱりわからない。

「悠斗」
今度は店の奥で店員と話していた男性が振り返って中津さんを呼んだ。

「理久、今日はおめでとう」
中津さんの友達らしき人は好奇心を隠せないといった視線で私を見つめた後、「ふーん」と勝手に納得している。

とりあえず頭を下げると、彼も会釈してくれる。真っ直ぐに見つめると気後れしてしまいそうな素敵な男性で、思わずドキリとする。

中津さんとはタイプが違って少したれ目の優しそうな目が特徴的な人だ。

「母さん。彼女と二人で話がしたいから、二階に行ってます」と、中津さんが私の手を引いて裏のドアを開いた。

ひんやりとした風が部屋に流れ込んでくるのを感じながら、私は大切なことを思い出した。

後ろを振り返って、「悠理花ちゃん、お誕生日おめでとう!」と声をかける。

何も用意していないけれど、悠理花ちゃんのお誕生日祝いをしたいと思ってたから、これだけは言っておかなくちゃ。

私の声に中津さんのお母さんの目が三日月になる。そうだ、彼の端正な顔は、お母さんに似ているんだ。
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