イクメンな彼氏
「ケーキを食べるから降りてきなさい」
「あーっぶぅっ!!」

キスに夢中になっている私達の真後ろで聞こえてきた声に飛び上がる。

全く気にせず続けようとしてくる中津さんを押し退けて、振り返ると笑いを噛み殺しているお母さんとご機嫌な悠理花ちゃんがドアに寄りかかっていた。

は……恥ずかし過ぎる……。
こんなところを見られるなんて。

「いいところだったのに……なぁ、悠理花」と悠理花ちゃんに向ける瞳はいつも通りとびきり優しい。

気持ちを伝えてしまった今となっては焼きもちすら焼いてしまうぐらいに。

「ふうん、上手くいったの。
悠斗が振られたって聞いて、面白いこともあるもんだと思ったのに」

皮肉混じりの言葉とは裏腹に中津さんに向ける目は暖かくて、二人は仲のいい親子なんだと感じさせられる。

お母さんいくつなんだろう……?
とても親子には見えないけど。

お母さんの言葉を聞き流して、中津さんが私の耳元で囁くから、私の耳と頬はまた熱くなってしまう。

「比奈、
優理花のお祝いだけ付き合ってくれる?
そしたら二人で抜け出そう」

このタイミングで名前を呼ばれて、私の心臓は駆け足になる。
中津さんって、優しいだけじゃ……ないのかも。

ほんの少しの心配と、それを塗り潰すようなドキドキを胸に私は彼の手を取った。
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