イクメンな彼氏
ベンチに腰掛けるて身を寄せあって白と青に輝くツリーを見上げる。

藤本さんが有名だと言っていたことを思い出してほんの少しだけ申し訳なく感じたけど、中津さんの横顔を見ていると幸せな気持ちになる。

「神崎 比奈さん」

改まってフルネームを呼ばれて緊張しながら彼を見上げる。次に彼が紡いだ言葉は私の期待通りで、また私の涙腺を刺激してくる。

「俺と付き合って下さい」

「はい」と泣き笑いみたいな顔に鼻声で答える。

こんな私で本当にいいのかな……?

頭から消えない疑問は、彼に尋ねたらクリスマスケーキよりも甘い言葉をかけられそうで、私は黙り込んだ。

ツリーの周囲の屋台で売られているホットワインのマグカップを合わせと、ラズベリーの香りが湯気に乗って鼻腔をくすぐる。

サンタの顔のマグカップはワインとセットで売られているもので、「2014」という数字が刻まれていた。

「このマグカップ、毎年もあるのかな」

私が呟くと、「ずっとあるよ。10年後には増えて困るね」と肩を抱き寄せられた。

25年間生きてきて初めて、一番大切な人が家族ではなくなった瞬間だった。
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