恋愛温度差
「どうだったの!? どうだったの? デート……」

 玄関を開けるなり、茂美さんがパタパタとスリッパを鳴らしながら飛び出してきた。

「いや、だから。デートじゃなくて、ただの食事会でしたから」

「二人きりだったんでしょ? それはデートっていうのよぉ~」

 茂美さんが嬉しそうに笑う。

「デートじゃないですってば」

 あれはデートじゃない。絶対に。

「お父さんも、光もダイニングで帰りをずっと待ってるんだよ。相当、心配してたみたい」

「はあ? 何を心配するんだか。相手は9歳も年下の男の子ですよ?」

 私はむっとしながら、家にあがった。

 何を心配してんのよ。何かあると思っているほうがおかしいって。

 黒崎さんの課題クリアのために食事会をしただけなのに。

「9歳年下でも、オトコでしょ? うっかり……とか」

「『うっかり』もなかったです。食事して、お店の前で別れて帰ってきましたよ」

 私は茂美さんにナニもなかったことを説明すると、さっさと自分の部屋に向かった。

 もう、みんな。何を期待してるんだかっ。

 私が好きなのは黒崎さんなのに。

 黒崎さんから借りたコートの襟をぎゅっと握りしめた。

 
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