恋愛温度差
「君野くんの言葉は痛い。突かれたくない感情を抉られる」
「抉ってるからね。突いて、ぐちゃぐちゃにしなくちゃ。俺が入り込む隙ができないだろ?」

 君野くんが、荒々しいキスをしてきた。

 荒々しいのに、なぜかあたたかいのはなぜだろう。

「十分、入り込んでるよ」
「どうかな」と君野くんが答えると、またキスをしてきた。

 舌を絡めてくるから、わたしは息苦しくて君野くんの胸に手を置いて、ぎゅっとコートを掴んだ。

 呼吸が乱れる。わたしも。君野くんも。

 荒くなった息が白く外に吐き出されて、わたしと君野くんの息が交じり合う。

 君野くんがニッと笑ってから、君野くんの額がわたしの額にひっつく。

「俺、今……卑怯なことしてる」
「え?」
 わたしが、「どういうこと?」と問いかける間もなく、君野くんの腕がぐいっと引っ張られた。
 バランスと崩した君野くんが、よろめいてわたしから離れた。

「旺志、何してんだ」と低い声が壁からしてきた。
 わたしはハッと横を見る。

 お店の窓が開き、黒崎さんが君野くんの腕を掴んでいた。

 見られてた? キスをしているところを、黒崎さんに見られた。

 だから、『卑怯なことしている』って君野くんが言ったの?

 黒崎さんに見られているのを知ってて、キスをした、と。

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