恋愛温度差
「こんな狭いところにあかりちゃんを連れ込んで、何してんだ?」
「見ての通り、キスしてました」

 君野くんが、黒崎さんに睨まれてもひるむことなく、応答する。

「無理やりか」と黒崎さんが問う。
ちらっと君野くんがわたしを見てから、「はい」と返事をする。

 窓から黒崎さんの拳が飛んできて、君野くんの頬を殴った。

「ちょ……!!」とわたしは目を丸くして、黒崎さんと君野くんの間に入った。
が、時すでに遅し。殴られた君野くんは駐輪場の金網に突っ込んでいた。

「あかりちゃん、大丈夫だった? 怖かっただろ?」と、黒崎さんがわたしの頭を撫でた。

 黒崎さんと、金網に背中を打ち付けたまま微動だにしない君野くんを交互に見やった。

 君野くん、どうしてこんなことを……。
 無理やりキスなんてしてない。

 わたし、抵抗してなかった。
 荒々しいキスなのに、君野くんからのあたたかさも感じてた。

「旺志、デートをするように課題は出した。が、手を出せとは言ってないぞ」
「つい。若さ溢れる23歳なもんで」

 君野くんが、金網に寄り掛かっていた体を起こして、自分の足で立った。
 乱れた前髪が、君野くんの瞳をかくして表情がよく見えなかった。

「お前にもそれなりの欲があることはわかった。課題はクリアだ。もう、誘わなくていい」
 黒崎さんが、私の肩をぐいっと引き寄せてきた。
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