恋愛温度差
「ごめんな、あかりちゃん。こんなことになるなんて。怖かっただろ。あたたかい飲み物をいれるから、お店に戻っておいで」
「あ。でも……」

「旺志にはきつく言っておく。光の店も出入り禁止になるように伝えておくから」
「え!?」

 わたしは君野くんを見つめた。
 
『ぐちゃぐちゃにしなくちゃ。俺の入り込む隙ができないだろ』
『俺、今……卑怯なことしてる』
『隙がありすぎ。ほかの男に肩を抱かれるのは見たくない。説明もきちんとする。好きな相手に話しにくいからって曖昧にしない』

 君野くんの言葉が頭の中でぐるぐるとまわる。

『あかりは出来なかったんじゃなくて、しようとしなかっただけ。振られるのが怖くて、踏み出さなかった。ずっと一人に固執する必要なんてなかったはずだろ。踏み出してたら成功してたかもしれない。あるいは別の恋愛に吹っ切れてたかもしれない。それをしてこなかっただけ』

 うん、その通りだね。
 わたしは出来なかったんじゃない。しなかったから、結果が出なかった。結果が出てしまって、現実を見たくなかったから、逃げてただけ。

 怖かった。
 黒崎さんに振られるのが怖かったんじゃない。
 振られて立ち直れなくなる自分を見たくなっただけ。

 振られて、自分が一人きりになってしまうのが怖かっただけ。

 最初から独りなのに。
 親友の妹として扱われることで、独りであるのを曖昧にしてただけ。

「わたし」と呟くと、私の肩を掴んでいる黒崎さんの腕にそっと手をのせた。

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