空色ユニフォーム
…”瑞香”。
わたしを毎日のように殴る母親がわたしにつけた、大嫌いな名前。
だからわたしは、わたしを”瑞香”と呼ぶ翔太が嫌いだった。
瑞香なんて言うな。
汚ない名前でわたしを汚すな。
だからこそわたしは、わたし自身を”瑞香”と呼ぶクラスメイトも、教師も、もちろん翔太も、傷つけた。
汚ない汚ない汚ない汚ない汚ない!
あの女も、あの女をたぶらかすクソオヤジも、あの女の血をひくわたしも。
みんな汚ない。
そんな中で出会ったのが、
当時わたしが通っていた中学の3年の先輩…カズキさんだった。
そのカズキさんもまた、わたしのことを
”瑞香”と呼んだ。
「瑞香はいつもつまんなさそうだよな」
そう言った先輩の、煙草をくわえて笑うその顔が憎たらしくて気がつけばわたしは先輩の右頬を平手打ちしていた。
この人は、愛されている。
親にも、友達にも、きっと恋人にも。
愛されて、愛を知って生きている。
わたしには、わかる。
愛されたことのないわたしには、わかるんだ。