空色ユニフォーム


「ってぇ…」

カズキ先輩が右頬をさする。

その瞬間。先輩の顔が鬼のような形相になった。
殴られる。わたしはぎゅっと目をつぶり、振り上げられる拳を待ち構えた。



はずだった。


「……殴んねぇよ。女なんて。」


恐る恐る目を開けると、わたしの体は先輩の胸の中にいた。

大きくて、しっかりしたカズキ先輩の胸。
誰よりも力強い、大きな背中。



「せ…んぱい?」

「………みず。」

それから先輩は、わたしを”みず”と呼んだ。
誰も、呼んだことのない、わたしにとって初めてのアダナ。

「みず、お前さ。俺の女になんね?」

「は……?」

初めての告白だった。

初めての恋の始まり。


「俺、みずのことほっとけねーや」



愛を知り尽くしたような笑顔で、わたしを見つめるカズキ先輩に、わたしは恋に落ちた。
…そう思っていた。だから、わたしはカズキ先輩と恋に落ちたフリをしたんだ。





わたしは、あの女と同じ嘘つきだ。









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