私に恋をしてください!
そして私はソラの言葉に、首を横に振るのが精いっぱいだった。

ストライプのシャツに、ネイビーのジャケットを羽織ったソラ。
それがセンスいい服装なのかすら、私には分からない。

ただ、今の表情と洗練された雰囲気は、私にただならぬ変化を与えたのは確かだった。

夜、家に帰ると、相変わらず接待ゴルフに興じてその成績が良かったと言うお父さんが機嫌良くリビングのソファーでテレビを見ていた。

『葉月、珍しく遅かったな』
「ただいま」
『社会人になって門限がなくなったから、遊び呆けるようになったか』

遊び呆けるって…まだ夜の7時なんだけど。
平日なら普通に残業してるよ。

「高校の時の友達が久しぶりに会おうって、一緒に遊園地に行ってきたんだ」
『それならいいんだ。まさか、どこの馬の骨かも分からない男とデートをしていたとか言われたら、お父さんは寝込む』
『いいじゃないの。葉月ももう23よ。彼氏のひとりやふたりいたっておかしくないでしょ』

お母さんはまともにフォローしてくれた。
けど彼氏は2人もいらないけどね。

『葉月は私が選んだ男性と結婚させるつもりだ。前から何回も言っているだろう』
『自分はゴルフだの宴会だので全然家にいなかったくせに、娘のことになると自由を許さないのね』
< 31 / 216 >

この作品をシェア

pagetop