私に恋をしてください!
『僕が、首都出版に会議で来た葉月に、不注意で火傷を負わせてしまったことがきっかけです』

ソラは素直に事実を花村さんに伝えた。
そして、マンガを描いていて、恋愛スキルを上げるために火傷の代償に恋人ごっこをしているということも。

『それ、いつからの話?』
『2週間前です』
『それでよく呼び捨てに出来るもんだね。僕なら照れて、なかなか呼べないものだけどなぁ』

それは・・・

「"空"という名前が、綺麗だと思ったので」
『"葉月"という名前が、可愛いと思ったので』

私達がそんなことを言うと、花村さんは首を傾げた。

『君達、意外と価値観が同じなのかもよ。恋愛ごっこも、さもすれば本物の恋愛になるかも知れないねぇ』
『価値観だけで恋愛が成就するとは思えませんよ』

花村さんに対するソラのひと言には、他意はないと思う。
けど、私の中では少しだけ、ほんの少しだけ心が悲しくなったのを感じた。

花村さんを自宅前で降ろして、私が助手席に乗り換えて、ソラとふたりきりになった。

『夜のドライブも悪くないな』

そう言って車を走らせるソラ。

『少しだけ、遠回りするね』

私の家の住所を聞いた後にソラは大きな道路を右にハンドルを切った。

着いた場所は、静かな公園。
ここで何をするのだろう。
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