狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

ⅩⅨ―ⅷ アオイの異変と真夜中の叫びⅤ



「キュリオ様、貴方様がおられるのですから…必ず姫様は助かります!お気を確かに!!」


この世界で唯一、死者以外を復活させられる万能の力を持つのはキュリオだ。彼がダメならば他の誰にも彼女を救う手だてはない。


「…あぁ…わかっている…」


そう言いながらもキュリオの白い手は小さく震えていた。たったひとりの愛する者を失うかもしれないという恐怖が今、彼を支配しているのだ。


「何にせよ、急がねばなりませぬな…姫様が仮死状態になるのも時間の問題ですじゃ。…心の臓がまだ動いておるのに硬直が始まるなど…これではまるで…」


ビクリと肩を動かしたキュリオは力強くアオイの体を抱きしめた。


「…どうしたんだいアオイ…?私を驚かそうとしているのかな…?」


「…お父様を困らせようとするなんて…アオイは悪い子だね…」





「…キュリオ様…っ…」


後方に待機している女官たちの瞳から大粒の涙がこぼれた。
見たことのない主の悲痛な姿は見るに耐えられず、やっと訪れた彼の小さな幸せが儚くも今…目の前で消え失せてしまうかもしれないのだ―――


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