狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
XXXⅥ―Ⅸ キュリオとダルドの出会いⅨ
ダルドはこの湯殿と呼ばれる場所へ来る前の事を思い返していた。
―――雨に濡れたキュリオが見慣れぬ青年を抱え城に戻ると…迎え出た大臣や家臣、女官や侍女たちが一斉に頭を下げ両脇に並んだ。
「お帰りなさいませ!キュリオ様っ!!」
たいぶ夜も深まった時刻だというのに皆キュリオの帰りを待ち、出迎えをと顔を揃えていたのだった。
「皆、遅くにすまない」
「詳しい事は明日説明するが、彼の名はダルド。私の友人だ」
「ようこそダルド様!」
初対面にも関わらず、目の前の人間たちから警戒心のない笑顔を向けられ…ダルドはわずかに戸惑っている。
「…え、えっと…」
…そして、決定的な何かを目にした彼はひどく怯えた様子を見せる。
「…っっ!!」
「…ぼ、、ぼく…」
(…ん?)
一向に震えが止まらないダルドに気が付いたキュリオは、彼の視線を追っていつも目にしている当たり前の物を視界にとらえた。
(ダルドが怯える原因は…家臣の腰にある剣か…)