狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

その27

―――まさか…この力…っ…!!


銀の髪を振り乱し、勢いよく屋上を目指したキュリオ。

かつての悠久の王・セシエルに理想の王たる姿を見出したキュリオは未だにその壁を超えられずにいる。

彼こそがキュリオの中の究極であり、もっとも尊敬してやまない唯一の人物なのだ。


「…セシエル様…っ!!」


すでに開いていた屋上への扉からは、大地を照らす月明かりを浸食するようにいくつかの雲が影を作り…やがて巨大化したそれは、完全な闇となってキュリオに襲いかかる。


「…っ……!」


(…光が…っ…)


完全に視界を遮られてしまったキュリオ。
暗闇になれていない彼が目を凝らしていると…空を切り裂いた何かが目の前に飛び込んできた―――…


「…お久しぶりですね。キュリオ殿…残念ですが、貴方のお相手はこの私です」


何かを掲げた青年の声がそう耳元で囁くと…


「…貴方にはここで死んでいただきます」


闇のなか…鋭く光る二つの瞳。

そしてたった一言。まるで金縛りにあったかのように体が重く沈んでいくような錯覚がキュリオの全身を駆け抜ける。

彼の放った殺気は紛れもなく…本物―――。


しかし…


「…誰に言っている?」


怯むどころか、ふっと余裕の笑みを浮かべたキュリオの目前に全神経が集中した―――。


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