狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

その28

―――ゴォオオオッッ!!!



一瞬の間に出現した銀色の炎。センスイの刃を受け、それらが吹き飛ばされていくと…やがてヴェールを脱いだ中心に、神々しいその姿が見え隠れする。



「…うそ…お父様まで神剣を…?どう…して……」



不安そうに中庭から屋上を見上げていたアオイ。

幼い頃、優しいキュリオの手の中でみた神剣の光はどこまでもあたたかく、アオイはキュリオの眼差しによく似たものを感じていた。


しかし今、遠目から見たその姿は…


優しさに満ちた彼(神剣)の笑みは一切感じられず、怒りの雄叫びを上げた獣のように荒々しいオーラに包まれている。


「アオイ様!近づいてはいけませんっ!!」


ふらふらと歩き出した幼い姫の腕を掴んだ剣士のカイ。


(それにこの気配…誰?なんだか懐かしいような…)


腕を掴まれてもなお、歩みをすすめようとする姫にカイは声を荒げる。


「アオイ様っ!!」


「カイ…」


ビクリと肩を震わせたアオイ。


「どうかキュリオ様との約束をお守りくださいっっ!!貴方様が無事でなければ…俺もキュリオ様も生きていけないんですっっ!!」


「…え?」


わずかに目を見開いたアオイの表情に我に返ったカイの顔が急激に蒸気していく。


「…えっ!?ふ、深い意味はなくて、ですね…っ…!?ただ単に…アオイ様が好き、というか…大切でっていうか…っ!?」


「…カイ、どうしたの?」


首を傾げ、じっとこちらを見つめているアオイ。


「…な、なんでもありませんっ!!!」


滝のように噴き出した汗をぬぐいながら、取り敢えずは彼女の動きを制止することに成功したカイ。


「さぁっ!せめて木の後ろに隠れていましょうっ!!」


カイの空回りした気持ちは一向に落ち着く気配を見せず、彼は勢いのままアオイの体をぐいぐいと木の影に押しやる。


「……」


(どうして…胸が、苦しい…)


胸に手をあて、眉をひそめたアオイはカイに背を押されながらも、その視線は屋上の光を捉えたままだった―――。


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