薫子様、一大事でございます!

お父様は解任。

自宅には「売約済み」という張り紙がされ、お母様と二人、行方知れずになってしまったのだ。



「さて、本当に困りましたね。猫の子一匹歩いていないときていますから」

「ほんとね……」


一体どこに身を潜めているのかしら。


「いなくなって3日でしたよね。だとしたら、相当腹をすかせているはずです。もしかしたらゴミ置き場なんかにいないでしょうかね」

「ゴミ置き場ねぇ……」


滝山は、歩きながらゴミ集積所を探している風だった。


「あ、あそこにありますね」


50メートルほど先を指差して、ちょっと見て来ますと、滝山が足音を忍ばせて走り寄る。

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