インセカンズ
他愛もない会話は途切れることなく、二人がコンビニを出たのは30分近くが経った頃だった。

「彼女さん、大丈夫ですかね?」

「大丈夫なんじゃないの。怒ってれば、電話なり何なりしてくるだろ」

「そうかもしれないですけど……」

「アズが気にすることじゃないだろ」

尻すぼみに言って視線を落とした緋衣を気にするように、安信が笑いかける。心配そうに窺っていることに気付いて顔を上げた。

「そうですよね。だって、ヤスさんが勝手に隣りに座ってきたんですもん。それに私何度か大丈夫ですか?って確認しましたよね。よくよく考えたら、私が恐縮するのも変だなって思えてきました」

最後まで言ってきゅっと口端を持ち上げた緋衣に、安信は面食らったように言葉を失う。けれども、次の瞬間、吹き出すように小さく笑った。

「アズのそういうところ、何でか俺好きなんだよな」

安信は、彼女の躊躇いのない率直な物言いを厚かましいとは思わなかったようだ。それどころか、緋衣が不安になってしまうくらい、満面の笑みを浮かべる。

「……可愛げないところがですか?」

「そうは言ってないだろ。素直っていうか、まぁ、俺にしか分かんないのかもしれないけど」

何とも歯切れの悪い言い方だが、安信はそれ以上は言わなかった。

緋衣が素直だというのなら、世の女性の大半は純朴な人間ばかりということになるだろう。緋衣は自分をそうとは思わない。婚約者に悪いと思いながらも、少しでも長く安信と一緒にいられることがこんなにも嬉しいのだから。
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