インセカンズ
「いい加減目が覚めたのは、浮気現場を初めて目撃した時だった。私も就活でイライラしていたのもあったけど、何だか情けなくなってきて。もう顔を見るのも口を利くのも嫌になって別れた。私も頑固なとこあるから、一度そう決めたら早かったな。

 でもね。振り返ってみると、辛いことだけじゃなかったんだよね。二人でいる時はいつも優しかったし、面白いことを言っていっぱい笑わせてくれた。色んなところにも出掛けたし、幸せな時だってちゃんとあった。私の青春っていつだったのかなって考えてみると、間違いなくタケルと過ごしたあの二年間なんだよね。だからといって、ヒデと積み重ねてきた六年と比べたら到底及ばない。タケルが知ってる私と今の私は違うもの」

「……どうしてヒデ君は、今になって大野の事を気にしているの?」

ミチルは、緋衣からの質問に曖昧な表情をしてみせる。

「きっとね、本当は今になってという訳じゃないんだと思う。同期の飲み会の帰り、ヒデが向いに来れない時はタケルが私を送ることになってるでしょ。昔、一度だけ、どうしてもヒデが来られないって時があってそれから始まったことなんだけど、私が出るときはタケルも必ず来てるのに気付いてた? 

歪だけどさ。お互いに疑心暗鬼になりながら、あの二人は信頼関係を取り戻していったんだと思う。ヒデは知ってたんだよね。タケルがずっと寄りを戻したがってたこと。あの二人は幼馴染でここまできたから、もしかしたら、私の事以外でも色々あるんだと思うけど」

緋衣は過去に、ミチルと大野が二人でいるところを目撃したことがあった。その時に大野が復縁を迫っていたのだろうかと思うと、何だか彼が可哀そうになってくる。手放してみて、初めてその大切さに気が付いたのだろう。もし緋衣が彼だったなら、自分の不甲斐なさを棚に上げて、この運命を恨んでしまいたくなるかもしれないと思う。
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