インセカンズ
「アズは? 遠距離の彼氏とどう?」
「うん。近いうちにちゃんと報告する。その時まで、ミチル待ってくれる?」
亮祐からのプロポーズを受けただけで、先のことは何も決まっていないという事もあるが、本来であれば、女性として今が一番幸せな時であるはずなのに、緋衣はまだ婚約した事実を誰にも知られたくはなかった。思い惑うところがあることは自分でも理解している。
「勿論。アズが今って思うときに話してくれればいいから」
「ありがとう」
二人は、ふふ、と微笑み合う。
「いい加減戻らないと課長に怒られそうだから、先行くね」
ミチルが立ち上がると、ちょうど安信が入口の自動ドアを潜ってきたところで、彼女は知った顔に、あ!と声を出す。緋衣も釣られてミチルの視線の先へと顔をやれば、安信と目が合った。
二人は、緋衣から少し離れたところで軽く会話を交している。ぼそぼそしていてはっきりとは聞こえないが、ミチルが‘アズ’と口にした声が聞こえてきて、緋衣は、何かしら自分の話をされているのだと思った。それとなく二人を窺っていると、安信の苦笑が聞こえてくる。
「ハッ。とことんだったらいいのかよ? おまえに口出しされることじゃねーよ」
「私はちゃんとお願いしましたからね」
安信の少し不機嫌そうな声に続いて、ミチルの牽制するような抑えた声が緋衣の耳にも届く。何かあったのだろうか、不安に思っていると、ミチルがリフレッシュルームを出ていく。彼女の少し怒ったような後ろ姿と入れ替わりに、安信が緋衣へと向ってくる。彼は「お疲れ」と言って、今空いたばかりの席に腰掛けると、緋衣の手元へと視線を落とす。
「うん。近いうちにちゃんと報告する。その時まで、ミチル待ってくれる?」
亮祐からのプロポーズを受けただけで、先のことは何も決まっていないという事もあるが、本来であれば、女性として今が一番幸せな時であるはずなのに、緋衣はまだ婚約した事実を誰にも知られたくはなかった。思い惑うところがあることは自分でも理解している。
「勿論。アズが今って思うときに話してくれればいいから」
「ありがとう」
二人は、ふふ、と微笑み合う。
「いい加減戻らないと課長に怒られそうだから、先行くね」
ミチルが立ち上がると、ちょうど安信が入口の自動ドアを潜ってきたところで、彼女は知った顔に、あ!と声を出す。緋衣も釣られてミチルの視線の先へと顔をやれば、安信と目が合った。
二人は、緋衣から少し離れたところで軽く会話を交している。ぼそぼそしていてはっきりとは聞こえないが、ミチルが‘アズ’と口にした声が聞こえてきて、緋衣は、何かしら自分の話をされているのだと思った。それとなく二人を窺っていると、安信の苦笑が聞こえてくる。
「ハッ。とことんだったらいいのかよ? おまえに口出しされることじゃねーよ」
「私はちゃんとお願いしましたからね」
安信の少し不機嫌そうな声に続いて、ミチルの牽制するような抑えた声が緋衣の耳にも届く。何かあったのだろうか、不安に思っていると、ミチルがリフレッシュルームを出ていく。彼女の少し怒ったような後ろ姿と入れ替わりに、安信が緋衣へと向ってくる。彼は「お疲れ」と言って、今空いたばかりの席に腰掛けると、緋衣の手元へと視線を落とす。