インセカンズ
「吸いすぎじゃない?」

「昼時間なくて吸えなかったから、これでちょうどいいんだよ」

「山崎って、昔からヘビースモーカーだよね」

「身体に悪いもんほど、やめられないものだろ」

山崎は何気なく言ったのだろう。けれども緋衣は、過去にも同じ言葉を吐いた相手の事を思い出して、一瞬顔を曇らせる。

「何? 俺の心配してくれんの?」

ほんの僅かな変化を捉えた山崎が尋ねたときには、緋衣はもういつもの緋衣だった。

「する訳ないでしょ。それに、したところでやめるつもりなんてないんでしょ」

「分かってんじゃん。アズも久しぶりにやらね?」

山崎がジャケットのポケットからソフトケースを取り出して、緋衣に見せる。

「いい。私は長生きしたいから」

制するように山崎に向って手のひらを少し押し出すと、彼は何を思ったのかその手を引き寄せる。突然のことで足元がふら付くがどうにか体勢を整える。

「今度は何?」

さすがの緋衣も今度ばかりは山崎を睨(ネ)めるが、彼は咥え煙草をしながら、緋衣の手を表に返したり裏にしたりしたあと擽るように指の形をなぞる。

「ふうん?」

「だから、何なのこれ」

「……アズ、結婚線出てる」

「え? 山崎、手相見れんの?」

「いや、ちょっと言ってみただけとか」

「もう、ばかじゃないの。いい加減放して」

そう言って山崎の手を振り払えば、それはあっさり解ける。

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