インセカンズ
緋衣は考えるように唸った後、やっぱり……と続ける。
「今日はやめときます。大通りでタクシー拾って帰りますね」
「帰って眠れんのか? アズ、ここんとこ、あんま寝てないんだろ?」
「え……」
なんで、それ……。しれっとした口調の安信に、緋衣は一瞬、ぎくりとする。目の下のくまは、メイクで上手く隠し切れていたはずだった。
「元々が色白だから気付かれないのかもしれないけど、おまえ、俺が出張行くまえから顔色悪いし、そのくせタクシーん中で体当たったとき熱かった。それに、」
安信は、緋衣の左手首を徐に掴むと脈を測る。
「ほらな。やっぱ脈も速い。これって、要は寝不足だろ」
指摘された事が全て当たっていて、緋衣は開き掛けた唇を閉じる。
原因は分かっている。
恋人の亮祐にかけたはずの電話にあの舌足らずな女が出た日から、熟睡できない毎日が続いている。
「失恋でもしたか?」
ついと視線を伏せた緋衣を追い掛けるように言葉を続ける安信に、思わず体が震えそうになるのを息を吐き出すことで堪える。
「はっ? なんですか、それ」
「アズはいま通常業務だし、女が寝不足になる理由なんて恋愛以外に何がある?」
「決めつけたように言うんですね。そんなふうに見えますか?」
「さぁ? どうだろう」
あれから2週間。
これまで、同僚にも誰からも気付かれることはなかった。それ位、いつもの梓澤緋衣を演じていたはずだった。それが、どうして……?そんな思いを隠して訊ねるが、安信はわざとらしく首を竦める。
「今日はやめときます。大通りでタクシー拾って帰りますね」
「帰って眠れんのか? アズ、ここんとこ、あんま寝てないんだろ?」
「え……」
なんで、それ……。しれっとした口調の安信に、緋衣は一瞬、ぎくりとする。目の下のくまは、メイクで上手く隠し切れていたはずだった。
「元々が色白だから気付かれないのかもしれないけど、おまえ、俺が出張行くまえから顔色悪いし、そのくせタクシーん中で体当たったとき熱かった。それに、」
安信は、緋衣の左手首を徐に掴むと脈を測る。
「ほらな。やっぱ脈も速い。これって、要は寝不足だろ」
指摘された事が全て当たっていて、緋衣は開き掛けた唇を閉じる。
原因は分かっている。
恋人の亮祐にかけたはずの電話にあの舌足らずな女が出た日から、熟睡できない毎日が続いている。
「失恋でもしたか?」
ついと視線を伏せた緋衣を追い掛けるように言葉を続ける安信に、思わず体が震えそうになるのを息を吐き出すことで堪える。
「はっ? なんですか、それ」
「アズはいま通常業務だし、女が寝不足になる理由なんて恋愛以外に何がある?」
「決めつけたように言うんですね。そんなふうに見えますか?」
「さぁ? どうだろう」
あれから2週間。
これまで、同僚にも誰からも気付かれることはなかった。それ位、いつもの梓澤緋衣を演じていたはずだった。それが、どうして……?そんな思いを隠して訊ねるが、安信はわざとらしく首を竦める。