インセカンズ
リビングに戻ると、安信は、キッチンの換気扇の下で缶ビールを飲みながら煙草を吸っていた。緋衣に気付いて目を細める。

「おかえり。男物の部屋着きてる女の子って、どうして可愛く見えるんだろうな」

「白シャツじゃなくて、スエットでも?」

緋衣は、カウンターの端で立ち止まると、指先まですっぽりと隠れている袖口を目の前に掲げる。

「どんな服だろーが、ぶかいから余計身体がちっさく見えて、保護本能が湧くのかね? 女子は男のそういうのないの?」

「私は特にないですけど。身体でいえば、ウエスト部分の少し膨らんだところが好きです」

「それ、脇腹の事か? マニアックだな。俺には聞かないのかよ」

「聞かなくても、男の人の答えなんて、大体一緒ですよね」

緋衣がそう言えば、安信は紫煙を吐きながら苦笑いする。

「まぁ、普通の男はそうかもな。俺は特にフェチはないよ。好きになったら、そんなの関係ないし」

「でも、彼女がいない時は理想があるでしょ」

「そんなのはただの理想だからな。それだったら、胸も尻も手のひらサイズがちょうどいいな」

「そうですか」

「とことん、興味なさそうだな」

「だって、何て言葉返せば? 一応、私も女ですよ」

「あー……。俺の振りがまずった訳ね」

「気付いてくれたんなら、さっそくワイン飲みたいです。喉乾きました」

「だったらまずは水飲めよ。冷蔵庫入ってる」

緋衣は、安信が指差した先の冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを取り出すと、タイミング良くグラスを手渡される。
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