インセカンズ
「話ぐらい、減るもんじゃないだろ。俺は、アズの裏の顔を暴きたいだけだし」

安信の後に続いて、緋衣もリビングソファに腰掛ける。

「裏の顔って……。私の恋愛遍歴聞いてどうするんですか?」

「酒のさかなにちょうどいいだろ?」

「私ばかりだとフェアじゃないです。ヤスさんのも聞かせてくれるなら」

「男の恋話なんて聞いて楽しいか?」

「あまり聞く機会もないので、聞いてみたいです」

モテ男が自ら語る恋話には興味があった。案外、月並みな経験値しかないか、もしくは千人切りみたいな下ネタ系? 緋衣は、少しわくわくしてくるが、安信はそう簡単に口を割る男ではなかった。

「そうか? 映画のような大恋愛の経験もないし、俺の話なんてつまんないもんだよ」

「それ言うなら、私だって同じですよ」

卒の無い返答に、がっくりと肩を落とす。

「って、話が終わったじゃねーか。優等生はガードが固くて嫌だねぇ」

「お互い様です。もういい加減、開けてください、それ」

緋衣が待ち切れない様子で訴える先は、安信が時間を見計らって冷やしておいた白ワイン。
ワインと聞くとフランスをイメージする人は多いが、安信が用意しておいたのはスペイン産の辛口のワインで、緋衣は行きつけにしているワインバーで初めて口にして以来、白はスペインのものを好んでいた。
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