インセカンズ
「相当、ワイン空けてきてますね?」

ソムリエナイフを仕舞う安信に、感心しながら言う。

「周りが強いの多いんだよ。それでも一人、2、3本くらいか? まぁ、その前にビールもじゃんじゃん空けてるんだけど」

「だめでしょ、それ」

「だから言っただろ、アル中だって。楽しいのは最初だけだけどな。4、5杯目からは素面で飲んでる感じ」

「キリがないですね。そこまでだと可哀そうな気もしてくる」

「確かにな。二日酔いってのも経験ないし、平気で次の日朝飯食ってるし。ライフワークみたいなもんか?」

「ライフワークがアル中ですか? そういう生き方も楽しそうですね」

「おうよ。だから、アズも優等生してないで、こっちまで下りてこいよ」

トクトクトクと耳障りの良い音を立てて、安信がワインを注いでいく。

「私、お高く留っている風に見えてます?」

「いや。そういうのとは、ちょっと違うけど。とにかく卒がないんだよ。隙がないっていうか。男からすると、そういう女を自分だけの前でぐだぐたにしてやりたいと思う訳。言ってること、分かる?」

安信は最後まで言うと、横目で視線を流す様に緋衣を見る。

「……さっき気付いたんですけど、もしかして、私、口説かれてるんですか?」

緋衣は、目の前に置かれたワイングラスの脚を摘まんでライトに翳して色を確かめながら、グラス越しに安信を見つめる。
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