インセカンズ
確かに知っているグリーンの香り。そこにほんのりと甘いバニラの匂いがするのは緋衣が愛用しているボディークリームの香りだ。さらりとした肌触りのシーツ。すぐ近くで感じる、自分以外の他人の体温。
「おはよ、アズ」
段々と戻ってきた意識にぼんやりと薄目を開けると、緋衣よりも少し前に起きていた安信と目が合った。
「あー。頭、混乱してるか? 昨日は、」
微動だにしない緋衣に、安信が事の顛末を説明しようとするが、彼女はそれを制す。
「いえ……。大丈夫です、覚えてます。ただ、一瞬、叫びそうになりましたけど」
緋衣は、喉を震わす自分のものとは思えない酷い声に驚く。酒やけだろうか。喉がガラガラしている。安信もすぐにそれに気付いたが、ふ、と口元に笑みを浮かべるだけに留める。
「全然、そんなふうに見えなかったけど。腹減ったか?」
「まだそんなには……」
安信は本当に気付かなかった様だが、緋衣は彼を見つけた途端、思わず可愛げのない野太い声で叫びそうになるくらい驚いた。こんなところで優等生キャラが発揮されたのか、間違っても、朝から爽やかな笑顔の彼に向って大声を上げなくて良かったと胸を撫で下ろす。
「そうだよな。昨日遅かったし冷蔵庫空っぽだから、アズ送るついでに朝飯どっかで食おーぜ。先シャワー使ってこいよ」
「はい。じゃあ、お言葉に甘えて」
当たり前の様に朝食を誘ってくる安信に、特に断る理由も見当たらなかった緋衣は了承する。
緋衣が首元まで布団を被ったままベッドの下に落ちている下着を手探りで探していると、隣りから伸びてきた安信の長い腕が、彼が昨晩脱ぎ捨てたワイシャツを掴んで緋衣の上に落とす。
「とりあえずそれでいいだろ。俺は、恥じらいのない女も好きだから、どっちでもいいけど」
「恥じらいがどうとかじゃなくて、一応マナーだと思うので」
緋衣は布団の中でささっとシャツのボタンを閉じると、起き上る為に寝返りを打った。
「おはよ、アズ」
段々と戻ってきた意識にぼんやりと薄目を開けると、緋衣よりも少し前に起きていた安信と目が合った。
「あー。頭、混乱してるか? 昨日は、」
微動だにしない緋衣に、安信が事の顛末を説明しようとするが、彼女はそれを制す。
「いえ……。大丈夫です、覚えてます。ただ、一瞬、叫びそうになりましたけど」
緋衣は、喉を震わす自分のものとは思えない酷い声に驚く。酒やけだろうか。喉がガラガラしている。安信もすぐにそれに気付いたが、ふ、と口元に笑みを浮かべるだけに留める。
「全然、そんなふうに見えなかったけど。腹減ったか?」
「まだそんなには……」
安信は本当に気付かなかった様だが、緋衣は彼を見つけた途端、思わず可愛げのない野太い声で叫びそうになるくらい驚いた。こんなところで優等生キャラが発揮されたのか、間違っても、朝から爽やかな笑顔の彼に向って大声を上げなくて良かったと胸を撫で下ろす。
「そうだよな。昨日遅かったし冷蔵庫空っぽだから、アズ送るついでに朝飯どっかで食おーぜ。先シャワー使ってこいよ」
「はい。じゃあ、お言葉に甘えて」
当たり前の様に朝食を誘ってくる安信に、特に断る理由も見当たらなかった緋衣は了承する。
緋衣が首元まで布団を被ったままベッドの下に落ちている下着を手探りで探していると、隣りから伸びてきた安信の長い腕が、彼が昨晩脱ぎ捨てたワイシャツを掴んで緋衣の上に落とす。
「とりあえずそれでいいだろ。俺は、恥じらいのない女も好きだから、どっちでもいいけど」
「恥じらいがどうとかじゃなくて、一応マナーだと思うので」
緋衣は布団の中でささっとシャツのボタンを閉じると、起き上る為に寝返りを打った。