メランコリック
相良の左手が、私の身体を引き寄せた。向かい合わせの形になる。

相良に抱き締められた状態だと、彼の肩に私の顔が当たる。
私は震える全身をちぢこめながら、それでも相良の肩に頬を押し当てた。

相良の温度と匂い。
完全な他人で、最高に不仲なこの男の存在に、只今この瞬間は凄まじく安心した。

相良の抱擁が一瞬ぎゅっと強くなる。
私はどきっとしたけれど、抗わず相良の腕の中でおとなしくしていた。


「送る。歩けるか?」


「うん」


相良は私の肩を抱き、ゆっくりと歩き出す。
駅の近くでタクシーを拾って、私たちは帰路についた。



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