メランコリック
「え?何?」


「俺、きちんと謝ってない。おまえのこと長く迫害し続けてきたこと」


藤枝が腕の中で身体を硬くするのが感じられた。


「俺のせいで髪切られちゃったし、嫌な想いたくさんしたよな。ごめん、ホントごめん」


「もう終わったことだよ」


「終わってない。俺はずっとおまえの気を引きたくてあんなことを続けてきたんだと思う。好きな女をいじめるっつうガキのまんまの思考でいた。あれほどのことをしておいてバカだと思うかもしれないけど、俺、やっぱきちんと謝りたい。ごめん、藤枝」


藤枝が俺の胸を押し、身体同士にわずかな隙間を開ける。それから、俺のことを見上げ、うっすら笑む。


「気にしてないって言えば、嘘になる。でも、もう本当にいいんだ」


「藤枝……おまえさ……」


「もともと他人の悪意も嫌悪もうといところがあるの。あんまり気にならないっていうか。そりゃ、嫌な気分にはなったけど、そんなものだと思ってたし。だから、今本社でちょっと嫌がらせされたくらいじゃ、あまりね」


藤枝は興味が薄そうに言う。きっと、本心からだ。
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