メランコリック
図星だ。

藤枝は元から無関心な女なんじゃない。
周囲に期待しないことで自分を生かしてきたのだ。

蓮っ葉な言葉も、理解をしている振りも、全部裏返し。
藤枝の心に巣食っているのは孤独だけじゃない。もっと大きなものは『怒り』だ。
自分を捨てた両親への、根深い憎悪だ。


「おまえ、親御さんに会いに行けよ」


俺は火に油を注ぐとわかっていても、言葉を重ねる。
藤枝は子どものまま怒りに捉われている。
本当の意味で自立するためには、両親と向き合うことが必要なはずだ。
そんなのは俺だってわかる。


「親御さんに自分の気持ちを話してこいよ。そうすりゃ……」


「私のこと知った気にならないで」


底冷えする声で藤枝が言った。俺が何か言う前に低い声が遮った。
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