メランコリック
「いや、あん時、きちんと家まで送るべきだった」


相良が表情を凍らせているのは、私への後悔からだ。
自分のせいで、私が殴られレイプされかけたと思っているのだ。


「大丈夫だよ」


相良は答えなかった。
タクシーで到着した相良の部屋は鉄筋のマンションタイプの一室で、私の部屋よりセキュリティも住み心地も格段に良さそうだった。

4階の相良の部屋に入ると、まずはシャワーを借りた。
浴室の鏡にうつる自分の顔は、すでに青っぽく変色した頬が痛々しかった。
シャワーで全身を流す。杉野に触られた部分をごしごしと洗う。

今更ながら、涙が出てきた。レイプは阻止できたけれど、充分に怖かった。
命の危険を感じたことは初めてだった。
こんなことで涙が出るとは。私の精神も結構人並みだ。

手足ががくがくと震え、思わずシャワーヘッドを落としてしまった。
ごとんという大きな音が響き、シャワーの温水が浴室の天井目掛けて勢いよく舞う。


「藤枝!大丈夫か!?」
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