メランコリック
借りたスウェットに借りたカーディガンを羽織ると、ベッドに手をつき、もう一度駿吾の唇に口付けた。

駿吾は起きない。それでよかった。


「大事なものができちゃった」


私は薄く笑って、ひとり呟いた。


「なくせないものができちゃった」


私はいとおしく駿吾の寝顔を見つめた。

ありがとう、私の一条の光。
私を冷たく暗い海から引き上げ、抱き締めてくれた人。

私は、ベッドに背を向け、歩き出した。
玄関で靴をはき、泣かないように呼吸を吸い込んでから、ドアを開けた。





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