メランコリック
今の汐里が、あの汐里を消した。
自分で決着をつけ、ひとりで未来に向かい立ち上がった。

それは正しいことなんだろう。たぶん、俺だってそれを望んできた。
できれば、俺の手で変えてやりたかったけど。


「おまえはひとりでどんどん進めるヤツだったんだな。俺みたいなインチキヒーローの手なんか借りなくてもさ」


「相良くんは、私のヒーローだよ」


もう名前では呼んでくれない。そのことに胸が痛む。
しかし、汐里は俺をヒーローだと言い切った。


「あなたがいなかったら、私は今もひとりぼっちだった」


「今は違うのか?」


「うん、祖父母がいて、学校に少しだけ友達ができて、一応だけどやりたいことが見つかった」


汐里が立ち止まり、こちらに身体を向けた。
ボブに近く伸びた黒髪が夕焼けを映してきらめく。
汐里はその頭を勢いよく下げた。


「相良くん、本当にありがとう。お世話になりました」

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