メランコリック
「それから半月一緒に療養所で過ごして、家族のやり直しをしたの。まるでごっこあそびみたいだったけれど、きっと父には死ぬ前に親孝行してやれたと思う。それから、実家に戻った」


「今は?」


「今は、学生してる。自分の気持ちに整理がついたから、何かしないとって思ったの。それで思い浮かんだのが母の仕事で」


「おふくろさん、何やってんの?」


「看護師。私、今看護学生なんだ」


俺は驚いて汐里の顔を再び見た。
汐里が看護師を目指しているなんて、夢にも思わなかった。
あの頃、無目的な目をしていた彼女が、そんなパワフルな職業を目指しているなんて、誰が想像できるだろう。


「母の真似っこなんだけど。自分で自立して生きていくには良い道かなって。インテリアショップの店員よりは似合うでしょ?」


「なんかなぁ」


俺は思わず苦笑する。

あの藤枝汐里はもういないのだとわかった。
何も映さない瞳をして、孤独を望み、他人と世界と隔たってきた藤枝汐里は、完全にいなくなってしまった。
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