メランコリック
俺は藤枝の思考が理解できず、妙な顔をしてしまう。


「私と杉野さん、本当に何もないの。だから、少しくらい噂になってみたい」


「おまえ、自分が何言ってるかわかってんの?」


「わかってる。杉野さん、家庭があるし、積極的にどうこうなりたいわけじゃない。でも、噂になったら、少し私のこと意識してくれるかもしれないから」


何言ってんだ、この女。俺は鼻で笑ってやった。


「おまえの思考、気持ち悪ィ」


「そうかもね」


藤枝が自嘲気味に答えた。
そして、それ以上何も発することなく、非常階段側のドアに消えた。


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