メランコリック
その日はつつがなく過ぎ、早番だった藤枝は時間通りに上がれた。
ちょうど、俺はコーヒー休憩中。
今日は藤枝とはフロアが違っていたせいか、今まで顔を合わせなかった。顔を見たら、朝のムカつきが沸々と甦ってくる。


「おい、根暗女。今朝見たぞ」


俺は藤枝に声をかける。
藤枝が何のことだろうという顔をする。
とぼけたって無駄だ。


「杉野とイチャついてたの見たっつってんだよ」


「ああ」


藤枝は狼狽することなく頷いた。
相変わらず余裕の態度に苛々してくる。


「あいつ既婚者だぜ?おまえと不倫してるって言いふらしてやろうか?」


少しは慌てろ。そんな気分で言った。
しかし、藤枝の反応は予想と違った。


「うん、じゃあお願いする」


「は?」


「社内で言いふらしてくれるんでしょ?いいよ」

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