メランコリック
置いていかれた理由は子ども心に理解できた。

ただ、ただ、思い出す。
私の脳裏に焼き付いた母の背中。

ああ、羨ましい。

あの人は自分の力で生きていけるから、ひとりに戻るんだ。


私もそうなりたい。


ひとりで誰にも頼らず生きていきたい。
そうして、人生をひっそりと終えたい。

誰かと深い交わりはいらない。
ひとり静かに凪いだ海みたいに。果てない水平に消えてしまいたい。


その想いは今も変わっていない。



*****



「汐里、こっち」


おしゃれな定食屋さんのテーブル席で、緑川笙子(みどりかわしょうこ)は待っていた。
きりっとした美貌で微笑む彼女は、私の数少ない友人だ。
同じ会社の品川店に勤めている。


「笙子、ごめんね。遅くなった」


「いーんだよ。髪切ったんだ。似合うよ、ショートも」

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