メランコリック
俺は小西の顔を見た。どんな意味かわからなかった。

小西の瞳の色が違った。
いつも何も映していないあいつの瞳はキラキラ輝き、一種の興奮状態にあるのがわかった。
俺は急に不安になった。しかし、それを言葉や行動に移せない。本当に子どもだったのだ。


「小西?」


「度胸試しするんだ。これができたら、僕は新しい場所に行ける気がする。見てて」


言うなり、小西は立ち上がった。

そして、俺の前で大岩の上から身を躍らせた。

俺は驚いて岩から下を覗き、小西が飛び込んだ水面を探した。

水しぶき。波紋。
小西は浮いてこない。

それから、俺は自転車で一番近い人家まで走った。
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