メランコリック
警察が来て、消防が来て、沢を捜索する。小西が見つかったのはその日の夕方だった。
幾分下流の川底に沈んでいた小柄な身体が引き上げられるのを、俺は見ていた。

今でも思う。

俺にできたことがあったんじゃないだろうか。
小西が『新しい場所』に行きたくなる前に。


その場所なら小西は幸せに笑えるのかもしれない。
でも、俺はそれを止めるべきだったんだ。



藤枝汐里の瞳は、懐かしい瞳だ。

小西とよく似ている。

あいつの何も映さない瞳も、いつか『新しい場所』を求めて消えてしまうのだろうか。





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