メランコリック
杉野さんがぐっと私の手を引いた。
彼が入ろうとしているのが、一番近くにあるホテルだとわかった。


「杉野さん……っ!私、そういうつもりはないです!」


「なんで?俺のこと好きなんだろ?気付いてたよ、藤枝が物欲しそうな顔で俺のこと見てるの。待たせてごめんな、今日はしっかり思い出を作っておこう。離れても再会を期待できるようにさ」


私は首をぶんぶん振る。
手を振り解こうとするけれど、体格的に完全に負けている。
私みたいな非力な人間にどうこうできる力ではない。

ずるっと身体を引き寄せられる。
杉野さんが私の身体を抱き寄せ、腰にがっちりと腕を回してきた。
束縛はいっそう強くなり、私は彼に捕まった形だ。


「奥さんとお子さんはどうするんですか!?」


私は最後の足掻きに叫ぶ。彼の良心に訴えるつもりだった。


「ご家族を裏切るなんてバカげてます!」
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