甘い時 〜囚われた心〜
一人はちゃんとしたタキシードを来た50代ぐらいの男性

もう一人は膝丈ほどのスカートのあまり派手ではないメイド服の女性

「柳瀬…史乃…」

消え入りそうな声で二人の名を呼んだ。

雛子がまだ令嬢という立場にいた時、常に雛子のそばで雛子を守ってくれていた者達だった。

執事長の柳瀬

メイド長の史乃



しかし、雛子が屋敷を出ていく時、一緒に行くとすがった二人を残し、雛子は黙って姿を消した。

それから、半年以上。

3人は再会した。


雛子に二人は近づいてくる。

鈴音の横を通る時、ユックリと頭を下げていく。

立ち止まり、二人を見つめたままの雛子の前に立った。

「お久しぶりです…雛子様…」

柳瀬が言った。

「お元気そうですね…良かった…」

そう微笑んだ史乃。

「二人とも元気で良かった…」

雛子の瞳が潤んでいく。

「今日は、雛子様に私達に同行していただきたく参りました」

いきなりの柳瀬の言葉に雛子の顔が変わった。
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