甘い時 〜囚われた心〜
少し沈黙した後、男は続けた。

「調べさせて頂きました。これから、あなたが住むあの家に相応しい方なのか…」

「住む?」

チラッと桜華に目を向けると、頬づえをつき、ボーッと外を眺めている。

『お前は俺が買った…』

泣き悶える雛子に、何度も何度も言い聞かせるように抱いた。

「私は…何をすれば、いいんですか?」

自分の値段は、たかが1000万…

抱かれて落ちていく自分に

(あー、私は…もう人ではないんだ…)

と、冷めていくのが分かった。

抵抗しても、きっと無理だから…
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