無声な私。無表情の君。
【コーヒー淹れるからリビングで待ってて】

「…ん」

キッチンに行ってコーヒー豆を探す。
結構本格的にコーヒーを飲む一家なので、コーヒーに関しては康介に負けないくらい知識も多い。
でも、何が好きかは分からない。
ブラックが好きなのは知ってるよ?
でもさ、種類までは知らない。
知ってたら逆に怖いし。
嫌いなのを出しても悪いからブレンドコーヒーにした。
まあ、最終的には何でもアリって事ですよ。
カップに淹れて康介に差し出す。

「ありがと。愛は飲まないのか?」

【私はいいよ】

「そっか。じゃあ、頂くよ」

私が淹れたコーヒーを飲んでる。
何か、無駄に緊張する。
私が倒れたあの日、オムライスを作ってくれた康介もこんな気持ちだったのかな?
いや、康介は料理大得意だから自信があったりしたのかな。うん、そうに違いない。

「……美味い。めちゃくちゃ美味い…」

え、嘘。
適当に色んな豆混ぜただけよ?
本当に。本当に。

「どーやって作ったんだ?色々ブレンドしてるだろ、これ」

【クリスタルマウンテンとキリマンジャロのブレンド、隠し味にマンデリンを少し。だったかな?】

マジで覚えてないから。
何となくで書いた。
多分合ってると思う。

「へぇー、そっか。
うち、クリスタルマウンテンとか買ったことない。あれって高級品だろ?」

【そんなことないって。少し持って帰る?】

「愛の家がいいなら少し貰ってもいいか?」

【いいよ~】

キッチンに戻ってクリスタルマウンテンを50g袋詰めにする。
そして、心の中で

「コーヒー詳しくて良かった〜〜〜!」

と叫ぶ。両親に感謝感謝である。
落ち着く間も無く、すぐにリビングへ戻って袋を渡した。

「ありがと」

フルフル

大丈夫だよ。
だって康介と一緒の物を飲めるって、そんなに嬉しい事は他にないよ。

「じゃあさ、次、ここ座って」

康介が隣のクッションをポスポス叩く。
何の迷いもなく座った。
馬鹿だ。本当に馬鹿だ。
少しぐらい疑っていれば、あんな事にはならなかったのに。

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