「お前は俺のモノ」【完結】
「…知らないなら言うけど。
そいつは俺のモンなの」

「はあ?多恵はモノじゃねえ!」


葵兄が声を張り上げるが、アキラは葵兄を全く見ていない。

見てるのは私だけ。


私に向かってスッと手を伸ばすと。


「来い、タエ」


そう言った。


トクトクと確かに私の心臓の鼓動が速まって行く。



ああ。
私は彼の元へ行っていいんだ。

それが嬉しくて堪らないんだ。


葵兄、ごめん。

私は葵兄の横をすり抜けて、彼の元へと走った。


少し見上げると、グレーがかった瞳に見つめられる。
彼の手を取ると、彼は不敵に微笑んだ。
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