離してなんかやるかよ。
「松本くんありばと…」
「うい」
そして松本くんはあたしの頬から手を離し手をグーにしてあたしの前に突き出す。
あたしはその手にコツんと自分の手をグーにして当てた。
この恋であたしも成長したけど
あたしは色んな人との友情が深まったと思う。
恋は人を変える。
本当にそうなんだな―…
「颯っ!神崎颯っ!」
ステージにあたしは出た瞬間、君の名前を呼んだ。
口から心臓が出そうだよ。
ってそれは恐ろしいから大袈裟だけど
お腹から発声して
緊張で心拍数が尋常じゃなくて
カラオケオール3日連続したことないけどそれぐらい喉が痛くて
心臓のドキドキがハンパない。
胸が熱くて体が熱くて
トリュフを持ってる手の手汗も
きっとえげつないと思う。
手汗でトリュフが溶けないといいけど。
「…そ、颯っ!」
「柚來…?」
たくさんの観客席の中から、
君を見つけた。
バイト先のあのハーフの女性と昨日の女の子に挟まれてる颯は…
プレイボーイじゃない…!なんて思える人じゃない。
「…好きなんです、心外かもしれないけど最初はチャラ男だと思ってた。今もプレイボーイなんじゃないかなぁ?ってたまに思う。でも颯はあたしになんやかんや優しくて…」
颯は色んな女の子と仲良くて
あたし以外の女の子にもきっと優しいと思う。
だから颯への好意はあたしだけのものじゃない、って理解してる。
それでもやっぱり君が好き。
「…あたしは颯じゃないと無理になった。あたしは颯のそばにいたいって思った」
颯に一時避けられても
イジワルされても
颯を独り占めするなんてできっこないって解ってても
「あたしは颯がいいの!颯じゃないとダメなの…!」
いつからこんなに颯を好きになったんだろう。
喉が重くて
胸が熱くて
涙腺が緩んで
心臓が本当に口から出ちゃったみたいに本音が素直な気持ちが口から溢れてくる。
抑えられない“好き”気持ちと止まらない涙は
あたしの全部。
もう自分の中が空っぽになりそう。
足が急に軽くなって
今にも倒れそうだよ。
視界がぼやけて
意識が朦朧としてきた。
昨日深夜にトリュフ作ってあんまり寝てない睡眠不足も一理あって
あたし…
「柚來!」
チョコレートの香りにふわっと
包まれた気がして
そこであたしの意識は途切れたんだ。
大好きだよ…、颯。