粉雪
先程から降りだした雪は、ガラス越しに見たよりも白く強く降り始めている。


少し気まずいようで、甘酸っぱいような空気の中。


男性が数歩先を歩いている。

男性はドアの側で、ふと振り返り微笑みかけてきた。

小首を傾げ、不思議そうにする、あたし。

無言で手渡される、黒い折り畳み傘。



「えっ? ちょっと……」



戸惑うあたしをよそに、男性はドアを開け振り返りもせず、雪の中に走り出した。

軽く片手を挙げながら。


あたしの手元に、黒い折り畳み傘と、小さなメモ。


メモをそっと広げる。

丁寧な文字で、携帯電話の番号とメアドが書かれている。


「キザな奴……」



あたしは、しばらく忘れていた感覚と共に、手の中の黒い傘を眺めていた。



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