冷徹執事様はCEO!?
朝食を済ませて用意を整えると、いつも通りに赤のワーゲンで駅まで送ってもらう。

車内ではNHKラジオ英語講座が流れていた。

「昨日は良く眠れましたか?」

田中が尋ねる。多分、深い意味はない、はず。

「あんまり」私はボソリと答えた。

「私もあまりよく眠れませんでした」

心臓の鼓動が早まるが、そう、とさりげない口調で相槌を打つ。

微妙な雰囲気のまま、車は駅に到着してしまった。

「今日のお帰りは?」

「いつも通りの予定。帰る時また連絡するね」

「畏まりました」

私はシートベルトを外して車から降りようとする。

「忘れ物です」

「へっ?!」

私は慌てて振り向く。

田中は腕を掴み運転席に引き寄せると唇にチュっと短いキスをした。

「いってらっしゃい」

至近距離でいたずらっぽく微笑む。

「…いってきます」

私は真っ赤になって俯きながら呟いた。

くやしいけど、私は田中の手のひらの上で踊らされているようだ。
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