冷徹執事様はCEO!?
アパレルメーカーのレセプションのためか、周囲の出席者は洗練された装いだ。

中にはテレビで見かける顔も多々あった。

今日の田中は、光沢のある黒い細身のスーツにグレーのシャツを合わせている。

サーモンピンクのポケットチーフはアクセントとなり、なんというか… 田中がオシャレだ。

眼鏡を外してるし、いつもはカッチリ分けられている前髪も、ふんわり後ろに流している。

黒いエナメルの皮靴はピカピカに磨かれており、腕時計はバセロンだ。

私服はダサいくせに、フォーマルは抜かりない。

確かに性格的に苦手かもしれないが、装いはすっかり周囲に馴染んでいる… どころか目立っている。

細身でスラリと背が高く、顔立ちも端正な田中は人目を惹きつける。

実際、先ほどからすれ違うご婦人達の視線がチラチラと田中に向けられていて、隣を歩く平凡な私としては妙に居心地が悪い。

小さくため息をつくと田中と目があった。

「今日はとてもステキね。今更だけど」

私はニコリと笑って見せる。

「燁子様もお綺麗です」

田中は耳元に顔を近づける。

「厚化粧は嫌いなんでしょ?」

私が赤い顔で恨みがましい視線を向けると、田中はおかしそうに笑った。
< 134 / 277 >

この作品をシェア

pagetop