冷徹執事様はCEO!?
「そこに愛はあるのかしら?」

私の一言を聞いて、田中は一瞬ポカンと口を開ける。

が、つぎの瞬間、田中は形の良い唇を歪め、声を上げて笑い出す。

「何が可笑しいのよ!」私はムッとして言い返す。

「駆け落ち同然で結婚をして失敗したのに、まだ愛だの恋だのと乙女のような事を言っているのですか、貴方という人は」

「わ… 悪い?」

「その前向きさには驚嘆だ」

田中はまだおかしいのか口元に笑みをたたえているが、声には軽蔑の色が滲んでいる。

だけど此処で引くわけにはいかない。

私は奥歯を噛み締めてギュッと睨み返す。

「結婚って好きな相手と一生を添え遂げるものでしょう。情熱的に求め合うのは最初のうちかもしれない。環境や状況によって次第に愛の形は変わっていくけど、相手を思う絆で繋がってるの。家柄や利益のためじゃないわ」

田中は私の話を小馬鹿にしたように鼻で笑う。

「結婚は打算と妥協です」

田中はキッパリと言い放った。

「私は何不自由ない生活のために田中と結婚するのは嫌なの!」

顔から笑みが消え、田中は刹那げに目をふせる。

「…随分、嫌われたものですね」

言い過ぎたかな…。

私の良心がチクリと痛む。
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