冷徹執事様はCEO!?
「で?来客中に仮病で抜け出して、稜の家まで着いて来ちゃったと?」


匠ちゃんはリビングのソファーに脚を組んで座っている。

私と田中は床に正座だ。

「正確には仮病じゃないわ。着物を着てたら本当に気持ちが悪くなっちゃったの」

「うん。でもそこはあまり重要じゃないな」

匠ちゃんは私の言い訳をあっさり流す。

「で、稜は家に燁子を連れ込んで、うっかり手を出しちゃった訳か」

「別に私たちやましい事なんてしてないわ」今日のところは…と心の中で付け足す。

「燁子、キスマークついてるぞ?首に」

匠ちゃんは一切の躊躇いもなく指摘してくる。私達はバツの悪さに俯いた。

「妹には手を出すな、と100回は言ったはずだ。どういうつもりなんだ、稜?」

言い方は穏やかだが匠ちゃんの目は凍るほど冷ややかで、きっとメチャクチャ怒ってる。

「結婚するつもりだが、何か問題でも?」

田中は無表情のまま言うと人差し指で眼鏡をくいっとあげた。

「ええええっ?!」

私と匠ちゃんは揃って声をあげる。

「燁子!お前はどうして男を見る目がないんだ。またロクデナシと結婚するつもりか?!」

匠ちゃんは私の肩を掴む。

「おいおいおい、少なくとも信夫より経済力はあるぞ?」

田中は冷静に突っ込む。だけど、そのツッコミ自体がボケである。

「それにプロポーズは燁子からだ」

田中め…よっけいな事を

私はジロリと睨みつけた。
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